正しい健康法とは?体の声を聴く力をつける方法 – 健やかな体の作り方: 五木寛之

正しい健康法とは?体の声を聴く力をつける方法 健やかな体の作り方 – 五木寛之

おすすめ本のご紹介です。五木寛之さんの、人生のレシピ 健やかな体の作り方

五木さんの著作は「大河の一滴」と、稲盛和夫さんとの対談本「何のために生きるのか」もおすすめなのですが、今回出会った「健やかな体の作り方」にもなるほどなぁという箇所がたくさんありましたので、ご紹介します😊

NHK出版の人生のレシピシリーズで、2018年から2020年のラジオ深夜便でお話しされたことをもとに編集されたもので、身体の健康、心の健康、五木さんの健康法などがまとめられています。

 

健康情報が氾濫した世の中

 

最初に出てくるのが、いかに健康情報が氾濫しているかというお話。五木さんは、この状態を異常だと言います。

 

ある週刊誌で、絶対にがんにならない食生活ということで、著名な学者の方が大きな記事を書いているわけです。その中で、乳製品は絶対にいけないと。チーズも、牛乳もいっさい飲むなと書いてある。「ええ?」と思っていると、別の週刊誌では、炭水化物を避けて、脂肪はいくら摂ってもよい。乳製品をしっかり摂るように、という。

(中略)

ジャーナリズムが、健康問題をもてあそんでいるという感じもするんです。これはちょっとよくないと思いますね。たとえば、「水は1日にできるだけたくさん飲め」と言っている一方で、「水毒」という言葉があって、水は、喉が渇いたときにちょっと飲むくらいでいいんだと主張される専門家の方もいらっしゃるわけです。

 

こういうことは多々ありますね。有名なところでは、以前は卵は1日1個まで、と言われていたのに、今は何個食べてもいいと言われたり・・・

五木さんは、医学の成果が医薬産業と結びついているところに問題があるとおっしゃっています。まさに今回の新型コロナのことでも色々と気づかれた方も多いのではないでしょうか。

また、日常のありふれた症状に対していかに現代医学が無力か、ということも言及されています。

 

心臓や脳をはじめ、重要な各部位に関しては、新しい発見や素晴らしい処置の仕方が出ているのにもかかわらず、立ったり座ったりするのに膝が痛いとか、手足がむくむ、腰が痛いといった日常のありふれた症状に対して、現代医学は思いのほか無力ということでしょう。

 

以前、「傷がなぜ治るのか、その理由はまだわかっていない」と聞いて驚いたことがありますが、それほど私たちの身体はわかっていないことだらけなのですよね。傷が治るメカニズムはわかっても、その『理由』は今の医学でも分かっていなのです。

五木さんは、お医者様に行く前に、まずは自分の身体が発する声に耳を傾けましょう、と言われています。その通りで、身体は必ず何かしらのメッセージを送ってきてくれます。ただ、この声を無視して頑張ってしまうのも私たちなのですよね。

 

身体の声を聴く

 

私はお風呂に入るとき、身体にありがとうと言いながら洗うのですが、ある日、とても不思議な体験をしました。自分の身体の細胞から声が聴こえたことがあったのです。はっきりとした「声」ではなく感覚的なものなのですが、人類が始まった頃からずっと受け継がれてきている私の中の細胞が、こたえてくれたことがありました。いつも一緒だよって。色々なことを今までたくさん乗り越えてきて、ここまで私たちはみんなで一緒に頑張って、この人生を楽しもうとしてるんだよって。

その声が聴こえてきたとき、自然と涙が出てきました。

私は一人じゃないんだって本気で思えたときでした。私の中にある約60兆個の細胞ひとつひとつがずーっとここまで頑張ってきてくれたから、今の私があります。これはみなさんももおなじです。一人で生きているように感じますが、心臓を動かしたり血液を送ったり、食べ物を消化したり、自分ではコントロールできないことだらけなのです。

 

人間は孤独ではないんです。体と二人連れなんです。もっといえば、体と、心と、三人で一緒に暮らしているわけです。その仲間たちとちゃんと会話するようにしていけば、孤独など、いっさい怖いことはないと思います。

 

ほかならぬ自分自身の心と体が、いつでもどこでも自分とともにいてくれる最も親しい友であり、誰よりも頼りになる仲間であり、決して自分を裏切ることのない存在なのです。

 

自分と心と体と3人でひとつ、という考えは素敵だなと思いました。五木さんは、体からの声を『身体語』と名づけて、対話しているのだそうです。

身体語の声に耳を傾けると、身体にいいから食べるのではなく、体が欲しているから食べるようになる。私たちはこの声に気付けなかったり、読み違えしてしまうことがあるけれど、自分にとって気持ちいいこと、気持ち悪いこと、という感覚を物差しにするとよいそうです。

 

自分に合うものを見定める力

 

空腹こそ最強のクスリ」や「食べない健康法」の中でも1日2食が良いということが紹介されていて、タモリさんが1日1食というのは有名な話ですが、五木さんも1日1食半だそうです。

そして、食べ物の栄養だけではなく、生産過程の問題にも目を向けると、さらに情報は混乱するとお話しされています。このような中、一番大切なのは、誰かが言ったからではなく、”自分には何があっているのか”を見定めることです。

 

玄米否定論もあるのです。なんとなく「健康にいい」と信じられてきた玄米ですが、白米より血糖が上昇しやすいという研究もあるらしいのです。また、精米の過程で削り取られる糠の部分にこそ農薬が残留しているのだから、白米より玄米の方が有害だと考える意見もあります。これが、それぞれ頷けるような理論を背景にして主張されているので困るところなんです。でも、玄米万能説は、今は完全に否定されていますね。玄米も問題がある、白米も問題があると。

 

「いったいどうすればいいのだ?」と右往左往するばかりですが、大切なことは、私たちが一人一人異なった遺伝子を持って生まれたということではないかと私は思います。ある人にとってプラスになることも、別のある人にとってはマイナスになるかもしれない。

その中でどういうふうにその難しい問題を解決するかとなると、結局、本人が自分に合っているか合わないかということを的確に見定めて、他の人には合っていても自分には合わないという見定めを、冷静に、信念をもってやっていくことができるかどうか。そこが、今私たちに問われているのではないでしょうか。

 

まさに仰る通りだと思います。また、栄養のことを話す専門家はいても、その生産過程、流通過程、加工過程がどういうものなのか、という問題についてはほとんど説明しない、という問題点も指摘されています。農薬、遺伝子組み換え、海外からの輸送中に使われる防カビ剤など、実際にどうなのかは私たちにはなかなか分からないことなのではないでしょうか。

一つの情報が出ると必ず反対説が出てくるもので、無農薬の野菜は寄生虫の問題があるから実は身体には良くない、という説があったり、肉を食べた方がいいという説があれば、食べない方がいいという説がある・・・

そもそも、水も空気もすでに汚れている汚染物質の中で私たちは生活しているのだから、何の心配をすることがあるのでしょう?という文章が出てくるのですが、これは私がベルギーで暮らしていた時にある人に言われたこととおなじです。

住んでいた家の屋根裏にアスベストが使われていることがわかり、それを剥がして屋根をすべて取り替える、と言われた時のことです。

私が「アスベストって身体に悪いものなのですか?」と聞くと、その業者さんは笑いながら「今僕らが吸っているこの空気の方がきっともっと汚れているよ。何を心配しているんだい?」と言ったことが忘れられません(笑)

言われてみれば確かにその通りだな、と思ってしまいました。

このような中、私たちにできることは何か?の質問に対して五木さんはこのように答えていらっしゃいます。

 

自分の身は自分で守らなければならない。だとすれば、問題は「食べ方」になってくるのではないでしょうか。「よく噛んで腹八分」を心がけながら、いろいろなものを少しずつ食べる。そうやってリスクを分散させるしかないように思います。受け身の防衛策ではありますが、それが私たちにできる最も現実的な対処法であり、この複雑な時代の養生法かもしれません。

 

彼も、おもしろそうだと思う健康情報があれば、とりあえず試すのだそうです。そして自分に合う、合わないを決める。一つのことに固執せず、いろいろなことをやりながら、90歳になられた現在まで健康に過ごしていらっしゃるのです。

ちなみに「よく噛んで」というのはドロドロになるほどまでに噛むという意味ではありません。これは安保徹先生もおっしゃっていたのだと思いますが、あまりにも流動食のようにしてしまうと、胃腸が怠惰になってしまい、逆に良くないと。五木さんはご自身の感覚で、胃が怠けるんじゃないかという気がしているとおっしゃっています。そういう感覚を持たれているところがすごいなぁと思いました。

 

自分の感覚を大切に

 

次々と出てくる情報を目にしたときに、これはおもしろそうだと思うものがあったら、試してみるのが一番だと思います。

私もそういう意味でミーハーなので色々試しては、やめて、を繰り返しています😅

 

最近は、かつての「塩分の摂りすぎはよくない」という説がちょっと行き過ぎだと、塩分はちゃんと摂れと言われているんです。糖分もちゃんと摂らなければ駄目だという説と同じように、あまりに極端な方向にいってしまうと、むしろ危険だということです。

やはり、自分の体の声を聴くこと、たとえば、「この食べ物はちょっと嫌だな」と思う。その感覚を大切にすることがすごく重要じゃないですかね。「ちょっと食べすぎだよ」とか、体が自分に言ってくれること。動物的な感覚を大事にしてやっていくということです。

 

体の声を無視しない習慣をつけていこう、とあらためて思わせてもらった本でした。