先達のお陰ということを忘れない -日本人としての海外での振る舞い

日本人の海外での振る舞い

私は2000年にベルギーへ移住してきたのですが、日本から遠く離れたヨーロッパで、日本人はどう見られているのか、そして、日本人としてどのように振る舞うべきか、常々考えてきました。

私一人が行うことは、海外では「日本人がすること」として見られます。

私がしたこと、話したことは、「日本人がこんなことをしていた」、「日本人がこんなことを言っていた」と、こちらに住んでいる人たちの間では伝えられるわけです。大げさだと思われるかも知れませんが、私一人の行いが、次に来る日本人に対する印象を良くも悪くもしてしまうことは事実です。

 

逆の場合も同様です。日本で、例えば偶然知り合ったアメリカ人が何か面白いことを話したとします。するとあなたはきっと、「この間、面白いアメリカ人に会ってね!」と話を始めることでしょう。そして会話は必然的に、「アメリカ人ってそういう人たちなんだ!面白いね」と、たった一人のアメリカ人が行ったことでも、「アメリカ人はそういう人種なんだ」と結論付けられてしまうのです。

このことに気付いてから、私は海外に住む日本人としての責任を考えるようになりました。

私がこうして海外でスムーズに仕事をしたり、生活をしたりしていることも、その昔海外で一生懸命に頑張って来られた先達の方々のお陰です。

今日は、その点について綴ります。

 

海外に住む日本人は先達の方々の恩恵を受けている

これはどういうことかと言うと、昔の人たちのお陰で、今の日本人は海外でスムーズに仕事をしたり、暮らしたりすることができている、という意味です。

海外に来てから本当によく分かったのですが、海外での日本人のイメージは、非常に良いです。

「日本人は勤勉で真面目だ。そして礼儀正しく綺麗好きだ。」

これはほとんどの国の人たちに思われていることではないでしょうか。

 

私がこのことを特に実感するようになったのは、仕事上の取引を通じてでした。

アメリカとヨーロッパ、様々な国の人たちと契約を結んで来ましたが、私が日本人だと分かると、ありがたいことにすぐに信頼してもらえるのです。

「君は日本人だね、じゃぁ信頼できるね!」

彼らは冗談ぽくこのセリフを言いますが、実際にこの通りです。見ず知らずの、しかも私のような小娘でもすぐに信頼してもらえる。これは本当にすごいことなのですよ。日本人だから、という理由だけで、最初から信頼してもらえるなんて。

 

日本人がどのような人種かまだ伝わっていないような時代から、海外で頑張って来られた先達の方々のお陰という以外、何ものでもありません。

海外で日本企業を大きく成長させて来られた方々はもちろん、その企業で働いていた方々全員の態度が、このようなありがたい「日本人のイメージ」を作り上げたのです。

そして、世代が変わっても姿勢を変えることなく引き続き頑張って働いていらっしゃる、現在の日本人の方たちのお陰でもあります。日本国内で一生懸命頑張っていらっしゃる方々の姿勢も同様に素晴らしく、とても高い評価を得ていますよね。

このように、私が海外で仕事と生活をする上で受けている先達の恩恵は、非常に大きなもので、このことに心から感謝しています。

 



 

海外での日本人としての振る舞い

前述の通り、私一人の行動が、”日本人としての行動”と見られます。

せっかく最初に信頼してもらって仕事を始めても、その姿勢を守ることができなかったら全く意味を成しません。さらには次に来る日本人にも悪影響を及ぼします。

私が良い行いをすれば、「日本人はいい人だなぁ」とイメージが彼らにはつき、無礼なことをすれば、「日本人はなんて失礼な人種なんだ」と思われるわけです。

「一人の行動が、日本人全体としてのイメージに繋がる。」

これは責任重大です。

 

私の行動によって”日本人全体のイメージ”を持った人が、次に別の日本人に会う際、どのような考えを持つのか。私との出会いでよい印象を持っていれば、次に会う日本人にも当然、「日本人は良い人だから大丈夫なはず」というイメージを持つでしょう。

逆に、私との出会いが悪い印象であれば、次に会う日本人に対して、「以前日本人には散々な目に遭わされたことがあったな・・・」と、会う前から悪いイメージを自然に作ってしまうのです。

私はこのことを真剣に考えています。自分の行動が、次の日本人に影響を及ぼすという自覚を持つことは、非常に大切です。

 

自分の振る舞いが与える影響を知る

私の住むゲント市は大都市ではありませんが、それでも今は引越しをした後すぐに隣人に挨拶をする人は珍しいのだそうです。私がこれを実行した時、お隣のご夫婦がとても驚き、同時にとても喜ばれたのを覚えています。

彼らはその家に住んで30年、隣家の住人は何度も変わったそうですが、それまで一度も引っ越して来た人から、「越して来たものです、よろしくお願いします」という挨拶をされたことはなかったとのこと。

日本人としてのイメージを保つためにという思いで引越し後に挨拶に行ったわけではなく、自分から挨拶をしたくて行っただけなのですが、自然と彼らの中では「日本人は礼儀正しい」というイメージが出来上がるのですよね。彼らは私のことを「Our Japanese daughter (私たちの日本の娘)」と呼んで親切にして下さっています。

私が常日頃心掛けていることの一つに、できる限り礼儀正しく振る舞う、というものがあります。

小さなことですが、お店では店員さんに明るく挨拶をするとか、頼まれごとはすぐにする、お礼を忘れないなど。

一つ一つの小さなことも、日本人として見られているという意識を持つことが大切だな、と思いました。

 

先達の方々の苦労を忘れないように

私たち日本人は、海外で本当にスムーズに仕事ができるようになりました。

観光にしても、日本人のパスポートを持っていることで、ビザ不要で数ヶ月滞在できる国の数はとても多いですよね。

日本人のイメージが世界で良いのも、ほとんどの国に問題なく入国できるのも、先達の方々の苦労と努力があってのこと。

このことを忘れずに、そして日本人の良いイメージを保ち、良い印象を与え続けることに努めながら、海外での生活をこれからも楽しみたいと思います。

あなたがもし、今後海外にご旅行やお仕事で訪れることがあるとしたら、ぜひ先達の方々の素晴らしさに思いを馳せてみられてはいかがでしょうか。