このたび翻訳した『完璧になれない。だからいい』がどのような本なのか。その内容をご紹介します。
著者のヘミン和尚のことや翻訳者になるまでの話は下の記事をご覧ください。
「完璧になれない。だからいい」ヘミン和尚さんの思い
イギリスBBCのPodcastのインタビューでこたえていたのですが、ヘミン和尚さんがこの本を書こうと思ったきっかけは、自分に厳しすぎたり、人から植え付けられた自分のイメージというものに苦しんだりしている人があまりにも多いことに気づいたことから。
そういう人たちのために、救いとなる本を書きたい、と思い書き上げたのがヘミン和尚の第2作目となるこの書籍。
まわりの期待にこたえなければならない、と自分を苦しめてしまっている人や、他人にばかり優しくして自分のことを後回しにしている人、家族や職場での人間関係に悩む人、自分のやりたいことをやっていいのかどうか迷っている人・・・
年代を問わず、生き苦しさを感じていたり、悩みをかかえたりしている人に対して、ヘミン和尚が優しく語りかけます。
自分は完璧ではないところがいいんだ、と思わせてくれるのと同時に、他人への優しさや思いやりも学ぶことができます。
本の目次紹介
この本は8章に分かれているのですが、各章ごと、長文のあとに短文が続きます。そのため、物語のように最初から読む本というよりは、好きなところや気になったところから読むのに適しています。
長文の部分は各テーマにそって、ヘミンさんご自身の経験から学ばれたことや考え方が間違っていたことなどが赤裸々に語られています。
目次:
1章 大切な自分
自分にやさしく
君がいてくれるだけで
2章 家族
母親への愛
父親とは
3章 思いやり
抱きしめること
耳を傾けること
4章 人間関係
修行中の出来事
失望したとき
5章 勇気
まだ若きあなたへ
はじめての挫折
6章 癒し
許すことができないとき
憂鬱なとき
7章 自由
心の居場所
悟りへの道
8章 受け入れること
手放すとは
どん底からの学び
その時その時のこころの状態によって、拾う言葉や気になる言葉も異なるでしょうし、そのつど自分の気持ちと向き合うことができる言葉が満載です。
まずは自分にやさしく
第1章は『自分』について。
ヘミン和尚さんが『自分』を一番最初に持ってきたことには深い意味があるのだと思います。まわりのことに気をつかいすぎたり、自分を無視して他人のことを優先したりしてしまう人が多いから。
自分を犠牲して後回しにするのではなく、まずは自分を大切にしましょう、と教えてくれます。
まずはあなた自身を大切にしましょう。
それは身勝手なことではありません。
あなたが幸せになれば
その幸せはあなたのまわりにも
広がっていくのですから。
自分にやさしくすると
まわりにももっとやさしくなれるのです。
SNSで楽しそうにしている友だちを見て
嫉妬してしまうことがありますか?
私たちは人を外見だけで判断しますが
その人の内面まではわかりません。
SNSで見えているのは外側の部分だけ。
友だちもおなじように
あなたのSNSだけを見て
うらやましがっているかもしれません。
1位、2位、3位にならなくてもいいのです。
まわりと比べるのではなく
過去の自分と比べましょう。
そして、毎日がんばっているあなたのことを
好きになってください。
これからも、自分を信じていきましょう。
許すことができないとき
だれにでもこういう経験があるのではないでしょうか。頭ではわかっていても、どうしても許せないと思ってしまう。そういう自分に対して自己嫌悪に陥ってしまう。
そんなときの対処法もヘミンさんは教えてくれています。
憎しみや恨みの感情をまずは「そこにあるんだ」ということを受け入れる。これが最初にしなければならないこと。そういったネガティブな感情を認めることで、その感情は徐々に消えていきます。感情は反発すればするほど、強い力となって戻ってくるのです。
心の傷は無理やりなんとかしようとするものではありません。
押し返したり忘れようとしても
さらに強い痛みとなって戻ってきます。
あなたの心が必要としているのは、愛と癒し。
自分の心をあたたかく見守りましょう。
きっとその傷の下から
やさしい愛が顔をのぞかせてくれますから。
今日が最悪な日だからといって
あなたの人生すべてが最悪なわけではありません。
きっと疲れがたまっているのでしょう。
ぐっすり眠れば、気持ちも楽になりますよ。
ネット上の知らない人から誹謗中傷や批判を受けた時
これも現代病と言っていいほど、社会問題にもなっていることです。匿名をいいことに、好き勝手に発言をして相手を陥れたり傷つけたりする行為です。言葉は言霊。そのようなネガティブなエネルギーは必ずその発言者の元へ戻ります。相手を傷つけたり陥れたりしているように見えて、結局はそのような発言をしている本人が苦しむことになるのです。
いま辛い思いをしている人へ。ヘミン和尚さんの言葉から引用します。
どうか気を落とさず、あなたはあなたらしく進んでくださいね(^^)
あなたの味方は思っている以上にたくさんいますから♪ 私も、人を批判することなく、いつも前向きに頑張っている人のことは心から応援しています。
「あなたのことを知らない人や
なんの思いやりもない人たちからの
いいかげんな批判によって
人生が台無しにされることがあっていいのだろうか?」
ホン・ソクチョン (韓国で初めてゲイであることをカミングアウトした有名人)
やさしくて思いやりのある言葉より
怒り、暴力、きびしい批判を含んだネガティブな言葉のほうが
強い影響力を持っているように見えるでしょう。
でも、ネガティブな言葉はそのまま発言した人に跳ねかえり
その人を苦しめます。
最後には、自分の行いを後悔することになるのです。
どんなに最善を尽くしても
批判的なことや嫌味を言う人はかならずいます。
ミシュランの 3 つ星レストランでも
「こんなものか」と言う人がいるくらいなのですから。
世の中にはさまざまな考えの人がいます。
あなたがどんなにすごい人であっても
全員をよろこばせるのは無理なのです。
私たちは、10 個の褒め言葉より
たったひとつのネガティブな言葉に影響されてしまうもの。
批判されて傷ついたら、思い出してください。
そのひとつの言葉の裏には
あなたのことを応援している
10 個もの称賛の言葉があることを。
批判や非難の声は、応援の声よりも大きく聞こえます。
とくに気持ちが落ち込んでいるときには
その声援はかき消されてしまうのです。
でも、どうか耳をふさがないでください。
批判していた人たちは
やがて別の人を批判するためにいなくなります。
そして、あなたのうしろで
ずっと応援してくれていた人たちの声が
ふたたび聞こえてくるようになるのです。
著名人の名言
この本には、ヘミン和尚さんの言葉だけではなく、上述のホン・ソクチョン氏のような著名人の名言も多数登場します。ここにいくつかご紹介します。
「『おまえには描けないだろう』
そんな内なる声が聞こえてきたら
なんとしてでも描くのだ。
そうすればその声は消える」
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ(画家)
「みんなお金持ちになって有名になって
やりたいことを全部やってみたらいいんだ。
そうすれば、そこに答えがないことがわかるから」
ジム・キャリー(ハリウッド俳優)
「相手のことを本当の意味で理解してはじめて
許すことができます。
そして相手を理解するためには
その人の心の痛みを知ることがなによりも大切なのです」
ティク・ナット・ハン(ベトナム出身の禅僧、平和・人権活動家)
「沈黙は永遠のごとく深く
言葉は時のごとく浅い」
トーマス・カーライル(イギリスの思想家・歴史家)
あとがきと翻訳
今回は『訳者あとがき』を書かせていただきました。ひとりひとりができるかぎり明るく、心の重石を軽くして生きられるために、このあとがきに思いを込めました。
また、ヘミン和尚の言葉や思いをできる限り忠実に、そして日本人に伝わりやすいようにするためにはどうしたらよいのか、ということに魂を込めました。何度も何度も読み直しては書き直し、を繰り返して、出版社の担当者さんとも何度も話し合って作り上げた一冊です。
ちなみに、この本は韓国本の翻訳ではありません。英語版の『Love for Imperfect Things』です。この本からすべて訳し、ページもマッチさせていますので、英語の本のページと日本語の本のページを読み比べるとその通りになっていることをご確認いただけます。
さらに、世界中で翻訳されている本は『英語版』をもとに作られています。そのために表紙や中のデザインもすべて英語版とおなじなのです。
英語が得意な方や勉強している方は、原本でそのまま読まれることもおすすめします(^^)
翻訳について
英語の翻訳について、意訳と直訳の違いや翻訳に使える便利なツールをご紹介していますので、英語の勉強をされている方もぜひご覧いただけたらと思います。また、今回の書籍に関してよく聞かれる質問もまとめています。
あとがきにも書きましたが、この本を読んで少しでも気持ちが楽になったり、心が軽くなったりしてもらえたら、本当に嬉しいです。そのことだけをとにかく考えて訳した本です。あるがままの自分自身を受け入れて、どうかこの世にたったひとりしかいないあなた自身をおもいきり愛してあげてくださいね(^^)